北川研究室 - 東北大学大学院 工学研究科 化学工学専攻 反応プロセス工学分野

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研究について

研究内容をご紹介しております。

バイオディーゼル燃料の連続製造技術の開発

バイオディーゼル燃料の連続製造技術の開発

 バイオディーゼル燃料(脂肪酸エステル)とは、動物や植物の油とアルコールから作られるディーゼルエンジン用の軽油代替燃料です。この燃料でエンジンを動かした場合、軽油特有の黒煙や硫黄が排出されず、排気ガスがとてもクリーンです。また、バイオマス由来であることから、二酸化炭素排出量を増加させない再生可能エネルギーとして注目されています。
 現在の合成法では、動植物油とアルコールのエステル交換反応によって合成され、触媒としてNaOHなどのアルカリが用いられています。しかし、油とアルカリとのケン化反応が併発して石鹸を生じるため燃料品質が低下、触媒が混入した汚れたグリセリンが副生、高品質化のための煩雑な精製操作が必要、などコストや環境への負荷が大きいことが問題となっています。

 本研究では、イオン交換樹脂を触媒および吸着剤とした新しいバイオディーゼル合成法を提案しています。この手法は、品質低下の原因となる石鹸が生成せず、固体触媒であるため分離も容易、さらに、燃料合成と同時に副生物の分離を達成するため精製操作も不要となり、環境への負荷を著しく軽減できる画期的な技術です。既に、この最先端技術を実用化したベンチスケールの連続製造装置が完成しており、様々な原料から高品質のクリーンバイオディーゼルを製造し、その品質評価を行っています。

バイオディーゼル連続製造装置の詳細はこちら

ビタミンE類の高効率回収技術の開発

 トコトリエノールやトコフェロールなどのビタミンE類は、生活習慣病を予防する高い抗酸化活性をもつため健康機能物質として注目されています。しかし、これらはパームヤシや米ぬかなどごく一部の植物から搾油された油に低濃度でしか含有されていません。現在は、これらの油から100~250℃の多段階の分子蒸留とクロマト分離を用いてビタミンE類を分離回収する手法が試みられています。しかし、ビタミンE類は熱安定性が低く熱変性しやすいため、上記の方法では回収率が低いことが問題となっています。

 本研究では、分子蒸留操作を行わない新規な回収法として、イオン交換樹脂を用いた吸着・脱離法を提案しています。この技術では、大気圧下、常温という温和な条件でビタミンE類を選択的に回収した後、脱離液を供給することで高濃度で濃縮回収できます。回収率は、既に80%以上と従来法の2倍以上を達成しています。現在、油糧バイオマスを原料としたバイオディーゼル燃料とビタミンE類の同時製造プロセスの構築に取り組んでいます。

ビタミンE類の高効率回収技術の開発 ビタミンE類の高効率回収技術の開発

食用油などの酸化・酸化防止の評価・制御手法に関する研究

 フードロスからくる温室効果ガスは実は自動車と肩を並べるほど多いといわれています。脂質含有食品の多くが酸化による風味劣化にもとづき賞味期限が設定されており、この酸化を効果的に抑制することができれば、消費期限を伸ばし、フードロス削減にも大きく寄与することができます。一方、食品中の脂質酸化のメカニズムは、構成物質由来のラジカル種が複雑に絡み合っており、脂質と、水溶性・脂溶性抗酸化剤が複雑に絡み合って酸化および抗酸化反応さらには酸化促進反応を生じつつ連鎖反応ネットワークにより進行します。そのため、劣化予測やその防止策を講じることは非常に困難です。従って、効果的な酸化防止のためには、このような複雑な機構であるということを前提した解析が重要となります。

 本研究では、脂質酸化を支配する主要な活性酸素種(ラジカル)の振る舞いに着目し、速度論あるいは統計処理を組み合わせた数理モデル解析を駆使することで寿命予測を行うことに取り組んでいます。また、複雑なラジカルの振る舞いを制御するために、工学的なアプローチを導入し、酸化の進行を効率的に抑制可能な抗酸化手法の開発を行っています。さらに、このラジカル連鎖酸化機構は、有機材料全般で共通であることから、食用油のみならず、潤滑油や高分子材料、プラスチックなども対象として酸化劣化評価ならびに制御手法の確立を目指しています。

 また、ヒトの内臓組織細胞を構成する生体膜脂質の酸化は、癌や動脈硬化などの生活習慣病の一因となることが知られていますが、この酸化は、食用油の酸化と同様にラジカル連鎖機構に基づいて進行します。そのため、将来的には、生体内の酸化に基づく疾病予防にも適用することを視野に入れ研究を行っています。            

食用油脂質の酸化・抗酸化反応の概要 生体膜脂質の酸化反応モデルの概要

化学産業のための選択的酸化制御手法に関する研究

 酸化は、化学プロセスの中でも3割を占める最も重要な反応です。また、最近では、バイオマス利用でも、廃棄するような原料から、酸化によって高付加価値が可能であるという例が示されています。しかし、現状では、目的の製品のみをつくるために、環境負荷が高い酸化剤が使用されていることが多く、酸化反応プロセスは最も環境を汚染しているプロセスの1つともいわれています。これを打破するための方法として、酸化剤として酸素(空気)だけを用いて目的の化成品のみを製造することが使う方法が理想的です。一方で、酸素はそのままでは原料分子の目的外の色々な場所を攻撃してしまい、目的のものとは別の生成物ができたり、分解して最後は二酸化炭素へと変えてしまうことがしばしばです。そこで、この酸素を、低環境負荷の条件で、目的の化成品のみを作り出す活性種へと変換する方法の確立が重要となります。

 本研究では、温和な条件での選択的酸化反応の進行を目的として、酸素と水によるグリーンな酸化反応に着目しています。酸素と水の組み合わせはクリーンであり、また、環境負荷も非常に低いです。そこで、これらを使って目的の酸化のみを進行させるため、選択酸化が可能な活性種を生成する触媒反応の設計を試みています。さらに、触媒なしでも所望の活性種を得るための手段として、プラズマ照射に着目し、新たな選択酸化法として、プラズマ照射水中で生じる活性酸素種の制御について検討を行っています。

触媒を用いたグリセリンの選択酸化反応の概要 触媒を用いたグリセリンの選択酸化反応の概要

固体触媒による再生可能原料の高度資源化プロセス開発とそのモデル解析技術

 現在バイオエタノールやグリーンメタノールが注目を集めていますが、さらに今後は、燃料用途、化成品用途として炭素鎖のより長い炭化水素やアルコールが求められると予想されています。中でも最近ではイソブタノールがドロップイン燃料としての特性を持つことが注目されています。そのため、これらの脂肪族アルコールを再生可能資源から製造することは、バイオリファイナリーの実現につながります。

 我々は、気相流通触媒反応により、バイオエタノールをベース原料、グリーンメタノールを炭素鎖伸長の原料として、所望の炭素鎖アルコール、特にC4アルコールにアップグレードする方法を提案しています。

 また、廃プラスチックのアップサイクル技術にも取り組んでおり、プラスチックを所望の位置で分解することで潤滑油や液体燃料へと高度資源化することを目的として、触媒反応解析やプロセス設計に取り組んでいます。

 これを達成するための手法として、トップダウン型の反応速度論モデル解析を利用することで、反応過程のボトルネックを可視化に取り組んでいます。この数理モデルを利用する解析では、プロセス全体からナノオーダーの表面反応に至るまでにおいて支配過程にフォーカスすることができ、これにより可視化できない領域等においてもメカニズムの解明が可能となります。この解析で得られる情報をもとに、目的の反応を進行させるための触媒プロセス設計を行っています。

高度資源化プロセス開発 トップダウン型反応速度論解析:ボトルネックが可視化

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